かとりぶたとあじさいの、子どもと遊ぶログ

かとりぶたとあじさい夫婦による、男子3兄弟育児での体験や、考えたことのブログ。

家事育児と仕事にまつわる経済合理性と間接差別の話(長文)

今回さんたろうの育児のため、1月から約3か月の育休を取ることにしました。
なぜ取ることにしたのかをまとめておきます。

育休取得との希望を伝える前から調べたり考えていたことです。
男性の育休は全く一般的ではないので、理論武装が要りますゆえ。

お伝えしたいこと

いろいろ書いていたら長文になったので、最初にお伝えしたいことを書くことにします。

今の日本には社会的に間接的な女性差別があることを認識いただき、女性の働き方や男女平等について考えてみてください。

では始めます。

なぜ女性(妻)が家事責任を負うのか

多くの家庭で、女性(妻)側が家事責任を負っています。
男性(夫)側は、やってもサポートの場合が多い。
なぜでしょうか。

経済合理性を重視するのが正?

経済合理的に考えて、夫が仕事をして妻が家事育児をやるのが自然というのはよくあることです。
つまり夫のほうが稼いでいる(ときには断然!)ということです。
経済合理性は重要ですから、当然だと思います。

ただ、その男女間の給与格差がなぜ生まれているかに少し思いをはせてもよいかもしれません。
経済合理性の背景には、女性に対する間接差別があるかもしれません。

間接差別とは

間接差別とは、異なる扱いを受けていなかったとしても、異なる状況にある人々に対して同じ扱いを行うことによって生じる差別のことをいう。(Wikipedia)

一見公平な扱いをしているように見えて、実は特定の人(群団)に対する差別になっていることを指します。

極端な例

当社はデスクが高い(天井が低い)ので身長が高い(低い)人を採用する
一律の基準なので公平なようにも見えますが、一般的に男性が女性より背が高いので、男性(女性)を優遇する間接差別になっています。

こんなことありませんけどね。
しかし、次の例はありがちです。

ありがちな例

残業が多い(時期がある)会社なので、残業できる人がほしい
家事育児の担い手は、どうしても急な休みが発生したり、働く時間に制限があったりします。
この例は、家事育児担当者に対する間接差別になっています。
一般に女性が家事育児を担う場合が多いので、結果的に間接的女性差別になっています。

女性が就ける職を制限されているということです。

話を戻して経済合理性の話

平均的に、女性は男性に比べ給与が低いです。
同じ学歴、同じ年齢層、同じ企業規模でも女性の平均給与は男性よりも低いです。
就職時点では差は小さいですが、特に30~34歳で差が拡大し、その後は差は縮んできません。
男女の賃金推移
https://www.mof.go.jp/pri/research/discussion_paper/ron282.pdf

女性に家事育児負担が偏っていることが大きな原因

これは、女性に家事育児負担が偏っていることが大きな原因と考えられます。
特に、育児です。子育てのために休職する、短時間勤務をする。
それによって給与が減る、または昇進が遅れることによって昇給が伸びない、という流れです。
一旦退職して、パートなどの仕事に替える場合も多いでしょう。

なぜ女性に家事育児負担が偏るのか?

理由はこういうところだと思われます。
① 女性が子供を産むために、絶対に働けない期間が発生するから
② 女性の給与が低いから
③ そういう慣習だから

①は子供を持つ以上は絶対です。女性しか産めません。出産前後2~3カ月は働くどころではありません。
②は経済的な理由ですが、②の理由は①にもなっていることが重要です。
③は、①や②が積み重なって慣習ができあがっています。

なお、③については、夫だけの問題ではないです。
現在、夫は家計に責任を持つのがあたりまえです。そして妻側がそれに頼っている場合があります。その認識は、高校大学時代から始まっていて、男性は進路を選ぶにも、将来それなりに稼げることが前提で、女性はそう思わない人もいる。それも、①や②が背景にあるからです。

子を持つことの意味と、それによる女性不利

社会が存続するためには子が必須です。子がいるから将来社会や企業が存続していける、自分が年老いた時に他の誰かが働いていてくれることが期待できるわけです。
子を持つのは個人の自由ですが、それによって社会全体が恩恵を受けているということです。

しかし、現在の日本のように社会の存続に必要な家事育児を女性に負わせていると同時に、仕事では男女平等の基準だとすると、決定的に女性が不利になります。
その状況で男性側は、「仕事は男女平等」だと、「仕事では特に男女の違いは設けていない」とそういう話をしているわけです。

仕事が楽しくないからやめたいという人もいることについて

仕事が楽しくない、仕事をしたくないというのは男性にも女性にもあることです。やはりやめたいことはある。
ただ、適切な難易度で、取り組む価値のある仕事は結構楽しいものです(と思っています)。フロー状態 はこういう状況から生まれます*1
。稼げるし。

仕事が楽しくない理由の一つに、仕事内容があります。適切な負荷と難易度の仕事ならよいですが、そうではない場合楽しくない。
自分がやっても他の人がやっても違わない。
こうなるとモチベーションは上がりにくい。

女性はそういうケースが多いように見えます(統計はない)。
なぜそういう仕事になってしまうのか。
その理由は、多くの女性の労働時間が制限されているからで、責任のある仕事を任せにくいから。
そして女性の給与が低いから。

長時間労働やそれを前提とした考えに疑問を持つ

女性の労働時間が制限されている理由は、男性の労働時間が長いから。
同じペースでは仕事ができないから。

昨今労働時間の短縮が叫ばれ始めているのは、長時間労働を前提とする働き方が間接差別になっていて、女性の社会進出の妨げになっているからです。

利益と平等、どちらを優先するか

とはいっても、会社は平等にすればいいというものではありません。
男女平等にこだわった結果、会社がつぶれては困る。会社として利益を出したい。
男性のほうが仕事に対して融通が効くなら、男性を優遇して何が悪い。
そういう考えもあります。

不平等も影響が小さければいいでしょう。
ただ仕事人生は長いですから、人生全体に関わる課題です。
男女差別は、出自で人を差別することと同じです。
男女はそもそも違うのだから違って当然で、それは差別ではないという考え方もありますが、必要以上に違う、しかもその影響が大きいのは避けるべきと思っています。

他の国はどんな感じなのでしょう。国際的な状況を見てみます。

国際的に見ても日本は男女格差が大きい

日本はヨーロッパやアメリカに比べて男女間格差が大きい状態です。
男女賃金格差
日本は男女間の賃金格差が大きく、勤続年数も短いです。女性が仕事を辞めなければならない状況が発生しやすいからと思われます。
結果賃金も伸びません。
国際的に見ても、日本は男性が有利になっていることがわかります。

問題意識のまとめ

図にしてみます。
男女間賃金格差
https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/databook/2018/05/p183_t5-11_t5-12.pdf
女性が家事を担うこと、男性が家計を担う(仕事をする)ことにポジティブフィードバック(作用を強める働きのこと)が働いています。

各家庭で、男女差別ではなく経済合理性から

  • 女性は収入が低い→女性が家事育児を担う

としているつもりが、実は

  • 女性の働きにくさ、女性が家事育児を担うべきという慣習→女性の収入が低い

という間接差別の仕組みがその前にあるということです。

是正したいときの対策

以下のような対策が考えられます。
① 女性の家事拘束時間を減らす(男性の家事分担を増やす)
② 女性を優遇する(むしろ、もともと不利な分を戻す)

②は社会全体や企業の話です。
役員の女性比率を○%以上にするとかはおそらくこういう観点も含まれています。
女性優遇というと変に感じるかもしれませんが、もともと男性優遇なのでそれを平等に近づけるという考え方です。
企業が多様性を持つことによるメリットもあります。

放置すると従業員や役員は男性に偏ってしまいがちです。

①については個人の話も大きいです。
男性は全力で働くべきという社会的要請も若干あるので難しい部分も多いのですが、夫の立場から見れば、上図の「男性が家事から離れ、仕事に偏る」のステップを逆に回して、フィードバックを止めることができるかもしれません。

考え方を変える一つの方法

私がやっている、自分の考えを補正する方法です。
それは、男性にする質問や言葉をそのまま女性に置き換えてみる、あるいはその逆をやるということです。
男性に良くかける質問や言葉はこんなものがあります。

  • なぜ家事をやるのか
  • なぜ育児に協力的なのか
  • なぜ育休を取るのか
  • 子煩悩
  • イクメン

これらの言葉を女性にかけたら、と考えると、すごく変な感じしませんか。

実際には、出産以外は男でも何でもできるわけですから、意識的無意識的に、必要以上に男女の役割分担がされていることに気づくことがあります。
役割分担の多くは、各家庭の慣習や経済合理性から来ていると思われます。
でもそれは社会的な間接差別の結果が表れている可能性があります。

ときどき立ち位置を女性側に置き換えてみる、女性を男性に置き換えてみると、違った世界が見えてくるかもしれません。

*1:フロー状態についてはフロー体験入門―楽しみと創造の心理学などをどうぞ。